エリーゼのために

いつか、また逢おうね

わが家のハムスター天に召す

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昼過ぎに妻から電話が入った。なんだか切迫した声の様子だけど、どうした? 

「ハムスターの様子がおかしい、すぐに病院に連れて行かないと」

急ぎ私のほうで、以前診てもらったことのある動物病院に連絡を試みていたところに、再び妻から連絡。今度はメールで「死んじゃった」と。

 

昨夜までは元気に走り回って飛び跳ねたりしたのに、数時間後に死んでしまうなんて。確かに最近は毛並みが少し荒れてきたかなという感じもあり、想像より年齢が高いのかもなどと思った記憶がよみがえる。

 

飼い主は小学2年生の娘である。今は友だちと遊びに行っていて、起きた事実については知らない。どのように伝えようかと思いを巡らすが、シンプルに話をするしかないのだろう。

半年前、娘がもらってきたのは、メスのハムスターだった。そもそももらった時点で何歳だかわからなかったのだが、出産したことがあるという話だったので、1歳は超えていたのかも知れない。そこから5ヶ月半なので、ちょっと早いが寿命と言えなくもないのか。

「ちゃんとお世話できるの?」という問いに娘が頷いたことでハムスターとの生活が始まった。大人の側としては大丈夫かなと半信半疑なところもあったが、毎日欠かさず、水替え、エサやり、トイレ掃除の世話をやり切った。

 

夏休みの自由研究も、ハムスターの観察日記になった。切りぬいた写真と手描きイラストと解説とをファイリングしたもので、ちょうど完成したばかりだった。

これを学校に提出するときに、観察対象のハムスターがもうこの世にいないなんて、なんともやるせない気持ちで一杯である。

 

その日の夕方、娘が家に戻る少し前に帰宅するようにした。帰ってきた娘に、起こったことを静かに話した。「XXちゃんね、さっき天国に行っちゃった」

「え? なんで…、なんで…」と小声を発しながら、指で涙をぬぐう姿は胸に刺さる。娘にしてみたら、あんなに大事に毎日お世話をしてきたのに、という気持ちなのだろう。

近くの公園でお葬式をした。春になると見事な桜の木が咲き乱れる美しい場所だ。娘の小学校入学のとき、真新しいランドセルを背負って家族で記念撮影した場所でもある。いっしょに暮らしてきたペットを失ったことは悲しい。でも、このハムスターが来てくれたことで、娘の成長を大いに後押ししてくれたという感謝の気持ちがそれに勝る。

 

桜の木の太い幹の脇に小さ穴を掘る。愛用の木くずを敷いて寝かし、ひまわりの種をいくつか持たせた。

じゃあね。ありがとね。